藤井聡太棋聖 王位戦7番勝負第3局1日目 佐藤天彦九段が今までの2局を分析【2020.8.4vs木村王位】

将棋 藤井聡太 

8月4日、藤井棋聖は 木村王位との王位戦七番勝負第3局1日目を無事終了しました。
ここまで2連勝の藤井棋聖は、本局に勝利すれば最年少での タイトル二冠に王手をかける事になる 重要な一局。

多くの人が興味を持っている対局ですが 勢いに乗る藤井棋聖が突き抜けるか、
粘りが信条の木村王位が反撃するか。注目が集まっています。
今日の解説は木村王位応援が激しかった様な気がちょっとしてましたが どうなんでしょうか。
今局も藤井棋聖の力を見せてくれると思います。

対局前日の様子 藤井棋聖・木村王位

前日(8月3日)、両対局者は新幹線の新神戸駅から車に乗って現地入り。 暫く関係者らと歓談し、二人ともリラックスした表情で会場入りした模様。

検分後は場所を「有馬グランドホテルに」移し、 木村王位と藤井棋聖とそれぞれ個別に 記者会見が行われました。

木村王位は「藤井棋聖はしっかり考えるミスの少ない棋士。
番勝負は積み重ねが大事なので スコアは苦しいが一局一局大事に指したい」とコメント。
一方藤井棋聖は「木村王位はこちらが気付かない、 力強い好手を指される場面が多かった。 二日制なので集中してよい将棋が指せるように頑張りたい」と語っていました。

対局会場

木村王位に藤井棋聖が挑戦をする第61期王位戦七番勝負第三局は 4日5日の二日間にわたり、兵庫県神戸市有馬温泉にある 「中の坊瑞苑」で行われています。

舞台となる 中の坊瑞苑は創業152年の歴史を誇る老舗で、 落ち着いた雰囲気を保つため普段から13歳未満は入館できない他、 ドアの開閉やお茶くみも音が出ないように気を配っているそうです。

1982年から王位戦などの舞台となっており、 西の聖地とも呼ばれる将棋とのご縁が深い旅館。 対局会場は貴賓室「瑞雲」で一人一泊7万8000円以上のお部屋

対局詳細

立会人は淡路九段、副立会人は都成六段

本局の先手は藤井棋聖で持ち時間は各8時間
対局は9時から開始

第一局目の朝、有馬の空は薄雲で覆われていたようですが 一日通して雨の心配はないと言われていました。 都成六段が中継で足湯に浸かっていましたが、 お天気がとても良さそうで会場付近は、気持ちのよい晴天だったと思われます。

8時43分藤井棋聖が入室し、今局は紺色の着物に深緑色の羽織姿。
着席して箴言袋から扇子を取り出しひざ元に置き ポットのお茶を湯のみに注ぎました。

その後8時49分に木村王位が入室。
8時51分木村王位が一礼して駒箱をあけ 両対局者が大橋流の順番で駒を並べていきました。

対局準備が整い静寂の時間を過ぎ
9時立会人の淡路九段が「定刻になりました。
第61期王位戦七番勝負B第三局を始めてください」 と告げ、 両対局者が一礼をしたのち 、藤井棋聖がマスクをずらしお茶を一口飲み 7六歩と角道をあけました。

藤井棋聖は3手目で6八銀と指し矢倉を目指しました。
棋聖戦と言い最近は矢倉での対局が多いですね。
控室に対局開始に立ち会った関係者が戻りました。

両対局者の対戦成績は藤井棋聖の2戦2勝。
まだ本局以外での対局は実現していません。
2人とも居飛車等であり七番勝負第一局の戦型は角換わり腰掛銀
第2局の戦型は相掛かりでした。

両対局者の今局までの成績は次の通り

藤井棋聖
通算成績は188勝35敗(0.841)
今年度成績は19勝3敗(0.864)で対局数ランキング1位
勝数ランキング1位
勝率ランキング3位
連勝ランキング1位タイ(10連勝)

王位戦成績は15勝2敗(0.882)
根気が参加三年目。

木村王位
通算成績は660勝384敗(0.632)
今年度成績は5勝4敗(0.556)

王位戦成績は89勝46敗(0.659、持将棋1)
初参加は第39期(1997年)
前期豊島王位(当時)に挑戦し、4勝3敗のフルセットの末にタイトル奪取を
果たした。46歳三か月での初タイトルは歴代最年長記録となりました。
王位戦七ば勝負は今期が五回目
初めて防衛する側に立ちます。

対局内容

第1局は藤井棋聖が果敢な攻めで、 受けの巧者である木村王位を押し切って先勝。 第2局は、終盤まで木村王位が優勢で進んだものの、 藤井棋聖の逆襲が実り連勝した。

本局は12手目3二金の局面まではその藤井棋聖誕生の 一局(棋聖戦第四局)と全く同じ進行に なっていました。ただしその将棋は藤井棋聖が後手番。

先手陣の駒組は「藤井矢倉」と呼ばれ、この藤井は同じ姓でも 藤井猛九段が得意にしていた事から名づけられています。

因みにデビュー直後からの29連勝に初戦で加藤一二三九段と対局。
その対局で加藤九段は金と銀を王の前に並べて守る 戦法「矢倉囲い」へと駒を進めます。
これに対して、藤井四段(当時)も矢倉囲いで応戦。
「相矢倉」と呼ばれる形になりました。長年、加藤九段が最も得意としてきた、 相矢倉。
なんと、その全く同じ戦法で真っ向勝負を挑んだのです。
その理由を当時藤井棋聖は 「加藤先生が相矢倉を得意にされているので、その将棋で教わりたい。」と 答えています。棋聖戦でも渡辺二冠が得意とする矢倉を採用し挑み見事 棋聖を手にしています。
今回も木村王位が得意とする矢倉にしている辺り、 全くデビュー当時とブレない高みを目指す姿勢に 敬服しかありません。

33手目5八金と指した辺りで控室では立会人の淡路九段、 副立会人の都成六段が封じ手用封筒の準備を進めていました。
今回は淡路九段が「若いんやから、何事も経験」と対局場と対局者の 欄を都成六段に託す。 淡路九段が見守る中都成六段はワイシャツの袖をめくり一文字ずつ 丁寧に揮毫している。

昼食休憩までの持ち時間

12時30分昼食休憩に入りました。
ここまでの消費時間は藤井棋聖1時間12分
木村王位1時間59分
13時15分木村王位が早めに対局室に戻っていました
誰もいない部屋で一人マスクを外し静かに考慮を再開

昼食後の展開

藤井棋聖は13時27分に着席。
14時には控室のテーブルには書きあがった封じ手用封書が3通並んでいました。
今局も被災地への棋譜の為に1通余分に書くことになったようですね。
木村王位は会見で「将棋はなかなか助けになる事が少なくせめて 何か出来ればと感じた中で思いついた」 と話しています。
藤井棋聖2冠目の奪取を掛けたタイトル戦だと需要が非常に高そうなので どこまで行っても藤井棋聖の貢献度が凄い。

17時52分、手番の木村王位が記録係に封じ手用紙の準備を促しました
藤井棋聖は脱いでいた羽織を着て身なりを整え、1日目の終わりを準備。
18時立会人の淡路九段が次の一手を封じる旨を告げ、 木村王位は額に手を当て、悩ましげな様子を見せていました。

18時13分木村王位が立会席の方を向き、 封じ手の意思を示しました。
封じ手の考慮時間は実に31分
18時18分46手目封じ手の記入を終えた木村王位が戻ってきました

藤井棋聖が3通の封書を受けとり、裏側に赤いペンで署名をしました。
その封書を木村王位が受け取り改めて立会人の淡路九段に手渡しました。

佐藤天彦九段の1局目2局目の分析-藤井棋聖の強さ-

藤井棋聖が連勝したここまでの2局を、名人獲得3期のトップ棋士、 佐藤天彦九段は 「木村王位の『感覚』と藤井棋聖の『読み』が ぶつかり合っている」と分析しています。

藤井棋聖の将棋の特長を、佐藤九段は「圧倒的な計算力、 つまり読みの深さと正確さ」と解説しています。

「終盤戦はもちろん、先が読みづらい茫洋とした中盤戦でも、 あいまいな感覚に頼らず、読みを主体にして指している。 その精度はトッププロと比べても、はっきり勝っている」

 一方、佐藤九段が高校時代から研究相手を務めている
木村王位は「読みももちろん正確だが、 独特の感覚に基づいた力強い受け(守り)が持ち味」との見解。
「こちらが強引に攻めさせられ、 攻めを切らされることがよくあります。引っ張り込むような受けに、 分かっていても意表を突かれる」といいます。

2勝目について。
佐藤九段は「木村王位に一目でわかる悪手はなかった。
決め手を与えなかった藤井棋聖の正確な指し回しが 印象に残った」と総括しています。

現在藤井棋聖が最年少での二冠獲得に向け大きくリードしていますが 初防衛を目指す木村王位は、 前期7番勝負でも2連敗スタートから盛り返しています。
「昨年と同じ展開になればまだ分からない」と佐藤九段は語っています。

今後の展開を「藤井棋聖が先手の第3局は定跡、 木村王位が先手の第4局は定跡から外れた力戦形になり、 両者が持ち味を出し合うのでは」と佐藤天彦九段は予想していました。 明日が王位戦の山場になると言っても過言ではないと思います。
藤井棋聖の王手に期待します。

それでは今日のおやつと勝負飯について紹介します。

10時に午前のおやつがそれぞれの控室に運ばれました
藤井棋聖は「わらび餅(抹茶)」と「アイスコーヒー」
本わらび粉と和三盆で仕上げた餅に抹茶を加えた逸品

午後3時になり、午前に続いてのおやつタイムに。
「フルーツ盛り合わせ」とアイスレモンティー(氷あり)

フルーツ盛り合わせは、将棋界の2大タイトルを保持する
豊島将之竜王・名人が必ずと言っていいほど注文するメニューとして
知られている一品。

午後0時30分、昼食休憩
ここまでの藤井棋聖の消費時間は1時間12分、
木村王位は1時間59分
藤井棋聖の勝負メシは「神戸牛すき鍋膳」。
黒毛和牛の最高峰の1つとして有名な神戸牛に酢の物、
ごはん、生卵、デザートがついている豪華メニュー。
たっぷりと栄養を補給し、万全の態勢で 午後1時30分から対局に臨みました。

さて王位戦は新聞連合 (北海道新聞・東京新聞・神戸新聞・徳島新聞・西日本新聞)が 主催する棋戦で対局も主催する新聞社の地域で 開催される事になっています。 今回神戸新聞では中の坊瑞苑ですが歴史は 古く38年前から使われていますので 様々なドラマがここで刻まれてきました。
今回も藤井棋聖にとってとても大切な対局になります。

有馬温泉の紹介

有馬温泉は1300年の歴史を持つ日本三大古湯のひとつ。
古くは日本書紀に記されており歴代天皇や 豊臣秀吉らも好んだ温泉郷と言われています。
環境省が療養せんに指定する9種の主成分のうち7種(単純性温泉、 二酸化炭素せん、炭酸水素塩せん、塩化物せん、硫酸塩せん、 含鉄せん、放射能せん)を含んだ珍しい良泉、 鉄分と塩分を多く含む「金泉」は空気に触れると褐色化し、 冷え性、腰痛、関節痛、等に効能があります。
一方炭酸泉やラドン泉を含む「銀泉」は自然治癒力を高め、 飲めば胃液の分泌を刺激し食欲増進の効果があると言います。

有馬の温泉街にある有数の老舗旅館である「中の坊瑞苑」。
場所は神戸電鉄「有馬温泉」駅から徒歩五分、 大阪から直行バスを利用すれば一時間ほどで到着。
館内には金泉と銀泉、両方の湯を引いており客室に関しても和と洋、 様々なタイプの部屋が用意されている。
王位戦は1982年の第23期から毎年使用されています。

都成六段の足湯でお湯の色が出ていましたが、とても珍しい泉質のようですね。
一度行ってみたい。
明日夕方には勝敗が決まっていると思いますが 見逃せない一局になります。
 
二日制は体力が心配だと話していた藤井棋聖。
どうにか乗り切ってくれることを願っています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました