
2020年8月2日最年少タイトルホルダー藤井棋聖が
第70回NHK杯本戦トーナメント1回戦で塚田九段に113手で勝利し2回戦に進むことが決まりました。
そこで待ち受けるのが王位戦でタイトル奪取に挑んでいる相手、木村王位です。
ここでも対局が見られる事になります。
今回は対局解説を担当していた谷川九段のコメントや対局についての詳しい情報を紹介します。
NHK杯の進捗状況
NHK杯は予選リーグで勝ち抜いてきた18名が本戦トーナメントに進んできており それに加えシード権を持つ本戦からの出場する棋士を合わせると 合計50名がAブロック、Bブロックに分かれ し烈な戦いを繰り広げています。
因みに藤井棋聖はBブロックですがそこには隣の 「こやま」に師匠杉本八段がいます。 現時点で三浦九段と1回戦を戦い勝ち上がっている状況で、 次が畠山鎮八段との対戦です。 互いが順調に勝ち上がってくれば、 準決勝で師弟対局が見られるという楽しみも秘めています。
NHK杯のルールなど
本戦と予選ではルールも少し異なり、 予選は20分切れたら1手30秒未満(チェスクロック使用)
一方、本戦は10分切れたら1手30秒未満・他に各10分の考慮時間あり (チェスクロック使用)となっています。
どちらにしても一瞬で勝負が決まる超早指し戦。
長い時間の対局より、結果がすぐにわかるこういった棋戦を 好まれる将棋ファンも多いと思いますが 対局者は思考をフル回転し、戦うところから若手に向いているとも言われています。
コロナの緊急事態宣言が発令された事により、 第70回(2020年度)NHK杯将棋トーナメントは 1回戦の進行が暫く止まっていた時期がありました。
その時に放映されたのが。
NHK杯の過去名局-最年少優勝記録は羽生九段-
1998年度NHK杯準々決勝(4回戦)
▲羽生善治五段(18歳)-△加藤一二三九段(49歳)戦。
(年齢、段位は当時のモノ)
平成改元後、最初の公式対局は、 将棋史に残る名勝負として多くの人の記憶に残っていると思われます。
この時の羽生九段の年齢は今の藤井棋聖の年齢と同じ。
加藤九段を華麗に下した若き天才はこの後、 将棋史を越え日本史に名を遺す
名指揮へと成長していかれ今日に至るわけですが 加藤九段を倒したあと谷川九段を準決勝で撃破し 決勝では中原十六世名人との戦いでも圧勝劇を見せ、 最年少で優勝を遂げています。
そして羽生五段が達成した18歳という史上最年少での優勝記録も 現在まで更新されていません。 そして現在までに通算11回の優勝を果たしており、 NHK杯10回以上の優勝者に与えられる 「名誉NHK杯」の資格を、将棋界では唯一授与されている棋士でもあります。
因みにNHK杯に18歳4か月で最年少・優勝した羽生善治九段の記録は 藤井棋聖といえども、上回ることはできない大記録となっています。 この事からも、当時、羽生九段の勢いが凄かった事が分かります。
ただ藤井棋聖は常々、 先にあるタイトルや記録を意識して対局を行っていないと話していますが 勝ち続ける事には人並外れた思いを持っていると見受けられます。
要するに勝ち続けると自ずとついてくる記録や肩書な訳ですから 合理的な考えですし、必要以上に自分を追い込み 圧を瞬間的に掛ける事をしていない。
こういう藤井棋聖ですから 将棋界の先人が成しえなかった大記録をこれからも樹立していくことは 間違いないと思います。
対局内容-塚田九段の言葉・谷川九段の分析-
本局塚田九段との対局で解説を担当されたのが谷川九段。
NHK杯って豪華なんだなって思った瞬間でした。
藤井棋聖の対局中継は多いですがタイトル戦以外で 谷川九段が解説に登場された記憶がさっと出てきません。
対局解説があったのかどうかは思い出せませんが やはり話すテンポやトーンが聞いていて心地よく聞きやすいですし、 対局後の感想戦では対局者にジョイントして、 分析する姿を初めて見る事ができ、なんだかお得感満載の対局でした。
塚田九段は対局前のインタビューで 「対戦相手が藤井棋聖と知り 一瞬ガッカリしたが、 逆に考えると予選を抜けたから 藤井棋聖と初めて指せる、ご褒美を貰ったと思い直した。
恐らく指せるのは 本局が最初で最後になるかと」 とこのように話していましたが、対局中谷川九段も この件については触れていて次のように話しています。
藤井棋聖は出場4回目という事になります。
今迄は1回戦、2回戦で敗退だったと思いますが 今後藤井棋聖が1回戦から登場する事は無いかもしれないですね。 と話しています。
この後はタイトルを持っていれば2回戦からという事になりますから 今後対局する相手もおのずと 変わってきます。そういう意味では塚田九段が正直に話していた 今回が最初で最後になるかもしれないと いう言葉には重みを感じます。
王座のタイトルを奪取しトップに上り詰めた棋士から出た言葉が感慨深く 勝負の世界の厳しさも垣間見れた気がしました。
今局、先手番、藤井棋聖の誘導で戦型は矢倉になりました。
中盤、塚田九段が積極的な指し回しでやや優勢となるも 「決断良く指すことを心がけたい」と話していた藤井棋聖が、 相手の攻めを見切ると最後は一気に切り返して勝負を決めています。
対局後解説の谷川九段は次のように総括しています。
「塚田九段の構想がなかなかうまくいっていたと思うんですね。
藤井棋聖も途中自信がなかったと思います。
特に82手目塚田九段の6九角と打たれた手に対し、 藤井棋聖の83手目4七歩と指したところが 凄い勝負手で、それで寄りなしと見た判断が素晴らしかったと思います。」
と注目の一手を紹介していました。
藤井棋聖の対局ではよく注目される時間の使い方ですが 谷川九段は今局でそういった時間差が現れたところで次のように話しています。
NHK杯だけでなく公式戦や二日制の8時間のタイトル戦でも同じように 途中までは藤井棋聖の方が圧倒的に時間を使っていて。 でも終盤力が圧倒的ですのでね。
塚田九段もこれ位は時間の差をつけておかなければ というところはあるでしょうね。
終盤ぎりぎりの寄せあいがあった時にもちょっと余裕をもって指したいというのがありますよね。 と話していました。
今回の塚田九段に関しては図らずも時間差が出来た場面だったと 思いますが藤井棋聖戦では時間攻めを考える棋士も少なくないようです。
棋聖戦では渡辺二冠が対局後話していたように時間で 攻めようと考えていたという戦法も今の藤井棋聖には通用しない場面が 多々見られるようになってきました。 もともと凄いのに強さのステージが一つ上がったようにも感じます。
さてNHK杯での藤井棋聖の成績は、 初出場だった第67回でのベスト16が最高。
第68回は1回戦で今泉健司五段に、 第69回は2回戦で久保利明九段に敗れています。
今回はどこまで勝ち進めるか、注目が集まる。
初優勝まであと5勝と期待が高まってきつつあります。
藤井棋聖らしい将棋が出来れば自ずと見えてくる頂点。
見守って行きたいと思います。
この対局をみた将棋ファンからは次のような声
★最初で最後の対局なんて塚田先生は言っていたけど、 藤井棋聖の師匠の杉本八段だってここのところ強くなってきている。
弟子に刺激を受けて気力が戻って来たみたい!
前期順位戦で対戦した高野さんも棋士になって最高に 勉強したと言っておられました! ふけるにはまだ早い!頑張れ塚田先生!!
★藤井棋聖に対して、 序中盤優勢に進める棋士って、 結構多い気がする。
が、、、 気付けば棋聖の方が良くなってる。要するに、強い。
★藤井聡太棋聖が劣勢だったのに逆転しました。
やはり強いですね最後まであきらめないことを学べます。
★私は息子に将棋を教えましたが 今では飛車 角 香車の4枚落ちでも負けます。笑
最初は優勢ですがいつも逆転負け、、、それでも将棋は面白いです。幾つものタイトルに挑戦して頂きたいです。
★藤井棋聖は、途中9筋で押されていて劣勢でしたが、うまく逃げ切って その後反転攻勢に出ました。
さすがに終盤の寄せ、詰めは大したもので、ミスがありませんでした。
★この後は、木村王位、永瀬2冠、佐藤天彦さんとの対局が待っていて、 それに勝ってベスト4になります。 このトーナメントもなかなか厳しいですが、 早指しなので藤井さんには向いているかもしれません。 ぜひ決勝戦まで進んでほしいと思います。
【朗報】藤井棋聖殺害予告の犯人逮捕
藤井聡太棋聖の殺害予告を日本将棋連盟に送信し、 業務を妨害したとして、警視庁は7月30日、 住所不詳の会社員畠山拓也容疑者(43歳を威力業務妨害容疑で逮捕し、 発表した。
原宿署によると、畠山容疑者は4日午後11時半ごろ、 日本将棋連盟のホームページのお問い合わせフォームに、 藤井棋聖を名指しして「対局を辞めさせなければ、 殺害する!」などと記入して送信し、 職員に警備を強化させるなどして連盟の業務を妨害した疑いがある。
調べに容疑を認め、 「テレビを見ていて態度にいらっとした」と供述。 「こんな大事になるとは思わなかった。 連盟と藤井さんに申し訳ない」とも話しているという。
この様に報じられていました。
少し前に同じような事件で逮捕されているニュースが上がっていたので 藤井棋聖の件に関しても 捜査が進んでいるんだろと暗に期待していましたが、
犯人が捕まった事で少し安堵しました。
ただ藤井棋聖の地元の愛知県瀬戸市役所にも6月23日に殺害予告の 電話があり、
県警が脅迫容疑を視野に捜査している。という事もありますから 全面的に安心はできませんが、 日本の至宝を警察は守り切って欲しいと願うばかりです。
以前この件について動画を上げましたが、 多くの人が知る事で模倣する人が出てくると いう声がありました。
それは違うと思います。多くの人が無関心なのが一番怖い。
民意で警察も動かせます。
そして何かあるかもしれないという危機意識を 周囲が持って対応する事が最も大切だと
考えています。
これから先も安心して対局が出来る環境つくりに努めて頂けることを切に願います。
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