第44期棋王戦挑戦者決定トーナメント 菅井竜也王位ー藤井聡太七段【対局日・対局場所・解説者の言葉等】2018年9月3日

将棋 藤井聡太 

第44期棋王戦挑戦者決定トーナメント
(段位・タイトルは対局当時のモノ)

日時:2018年9月3日・月曜日 10時開始
場所:関西将棋会館「水瀬の間」
持ち時間:各四時間
先手後手:振り駒で決定 
     歩が三枚出て菅井王位の先手
※振り駒は上位者の振り歩先を使用。
 歩が上位者・とが下位者と設定し多く出た駒が先手になる
戦型:ゴキゲン中飛車
本局勝者は挑戦者決定トーナメントベスト6に進出。次戦で佐藤康光九段と対戦する事が決まっている。

中継情報

【ニコニコ生放送】
開場:9時50分、開始10時
解説者:佐藤和俊六段
聞き手:中村真梨花女流三段
【Abema Tv】
開場9時30分 開始10時
解説者:村山慈明七段、三枚堂達也六段
聞き手:千葉涼子女流四段、宮宗紫野女流二段

対局者の成績

菅井竜也王位 
今年度成績は9勝6敗(0.600)
通算成績は272勝109敗(0.714)

藤井聡太七段
今年度成績は18勝3敗(0.875)
通算成績は89勝15敗(0.856)
今年度の記録ランキング(暫定)
対局数7位対
勝数2位
勝率1位
連勝2位タイ
現在8連勝中

対局者の棋王戦成績

菅井王位
本棋戦成績は18勝7敗(0.720)
初参加は第37期。第42期に挑戦者決定トーナメントに進出経験があり
ベスト16で敗退。今期は地アトルホルダーにより本戦シードとなる。

藤井七段
本棋戦成績は8勝1敗(0.889)
前期が初参加で予選を通過したが挑戦者決定トーナメントで豊島将之八段(現棋聖)に千日手指し直しの末に敗れた。今期も挑戦者決定トーナメント進出を決めるといきなり関西の若きタイトルホルダーとの対戦を迎える事となった。

棋王戦進捗状況

本局はベスト16位入りを掛けた最後の一戦。ベスト16の対戦は左の山が黒沢怜生五段ー梶浦宏孝四段、稲葉陽八段ー増田康宏六段、久保利明王将ー行方尚史八段、佐藤天彦名人ー丸山忠久九段。右の山が三浦弘行九段ー船江恒平六段、佐藤康光九段ー本局の勝者、羽生善治竜王ー広瀬章人八段、片上大輔七段ー永瀬拓矢七段。重圧な組合わせあり、新鋭対決ありと楽しみな対局が多い。

棋士の近況

菅井 王位
菅井は現在、豊島棋聖と第59期王位戦七番勝負を戦っている最中で、五局を終えここまで3勝2敗。初防衛迄あと一勝としている。本局も注目の一戦だが勝手良いカタチで第六局に臨みたいところだろう。
藤井七段
今期の本棋戦は予選からの出場。牧野光則五段、古森悠太四段、大石直嗣七段、中村亮介六段を破って挑戦者決定トーナメント進出を決め、前期と同じ位置まで来た。今期は果たしてどこまで進むことが出来るだろうか。

両者は昨年8月4日の第67期王将戦第一次予選で顔を合わせて以来、二度目の対戦。初手合いは藤井のデビュー以来の連勝が29で止まったあと、通算34勝2敗という通算成績で迎えた。結果は菅井の完勝。当時菅井は7段という肩書(藤井は4段)だったが、貫禄の勝利と言える完璧な勝ち方だった。あれから約1年1か月の月日が経ち、再選となったわけだが、藤井は予選での中村亮6段戦に勝った後、主催紙から本局への意気込みを問われると「成長した姿を見せたい」と気持ちを語った。

過去対局の振り返り

王将戦での初手合いは菅井の先手で始まり初手から先手7六歩、後手8四歩、先手5六歩、後手六二銀、せんて7七角、後手4二玉、先手6八銀、後手7四歩、先手5七銀、後手7三桂、先手4六銀と進み、11手目にして早くも菅井が作戦勝ちとなった。その後、藤井は決断の仕掛けから勝負に行って攻め合いとなったが、読みの精度で上回った菅井の圧勝となった。藤井にとってはこう言う形での敗戦は珍しいが「成長した姿を見せたい」の言葉の裏にはそのような背景にある。

本局も菅井の先手番で藤井が後手番。藤井は後手番が多い棋士として知られており、これで今期の振り駒は先手4局、後手15局で現在の振り駒は4連続後手番。途中8連続後手番の振り駒が出るという事もあった。この後手番が多いというのはデビュー当時からも言える事で棋士デビューから昨年の今日までの振り駒は先手12局後手24局だった。なお通算振り駒は先手番36局、後手番55局(千日手指し直し局や順位戦は振り駒が無いので対象外)となっている。

対局室に現れた時(朝)の棋士の様子

本日藤井は9時に棋士室に入っていた。
紺のスーツに薄い水色のシャツ姿で、紺地に水色、白、赤のラインが入ったネクタイを着用。棋士室では詰将棋の本に目を落としているがかなりの前傾姿勢で問題を凝視していた。
菅井は9時15分ごろに棋士室に姿を見せた。
紺のスーツに濃い紺のネクタイを着用。キャリーバックを引いており、入室の際、入り口付近にいた藤井を確認すると「おはようございます」と小さく挨拶。荷物を置いた後すぐに対局室へと足を運んだ。

備忘録

本日の関西将棋会館での対局は2局。5階の御上段の間では井上慶太九段ー遠山雄亮六段戦(第31期竜王戦4組昇級者決定戦)が指されている。井上九段は菅井の師匠で、㋈1日には共に名古屋で行われた「西日本豪雨災害支援チャリティー将棋フェスティバル」に出演。菅井はリレー将棋の解説、指導対局、久保利明王将との席上対局などをこなし、タイトルホルダーとして慌ただしい壱日を過ごしたようだ。また、当日行われたチャリティーオークションでは、藤井が「飛翔」と揮毫した卓上将棋盤を始め、詰将棋色紙や杉本一門の揮ごう色紙などが出展。
棋士会副会長として司会を務めた畠山鎮七段は「多忙の両者にこれだけ動いてもらって感激しかありません」と感謝の言葉を述べている。

1手から20手まで

1.5六歩 
定刻の10時に対局開始
一礼後、菅井はこの手を指した。
2.8四歩
初手を確認した後藤井はいつもの通りお茶を口にしてから
非さ先をついた。
藤井は入室時点で既に上着を脱いでいる。
菅井も上着を脱いだ。藤井は手にハンカチを握りしめている。
3.7六歩
4.6二銀
5.7七角

6.4二玉
ここまでは両者の初手合いと手順も同一。
どちらが先に手Wお帰るかも注目のひとつ。
7.6八銀
8.3四歩

ここで藤井がこの手で変化。
初手合いの一線では代えて7四ふと突いていた。
菅井は着手を確認すると視線を盤上から逸らす。藤井は勢いよくグラスのお茶を飲むと膝に置いた手で読みのリズムを取り始めた。
9.5五歩
10.7四歩

11.5八飛
菅井が飛車を持ち上げ中央に回す。戦型はご筋位取り中飛車と決まった。
対局開始から15分が経過。
棋士室に村田顕弘六段が来訪した。村田六段と藤井は第90期ヒューリック杯棋聖戦一次予選準決勝で対決する事が決まっている。
12.3二玉
対して後手番の長足ではなく玉の移動を優先させた。
13.4八玉
14.4二銀
15.3八玉
16.8五歩
17.5七銀
18.7三銀
19.5六銀
20.6四銀

21手目から40手目

21.2八玉
菅井は現在先手番では8局連続で初手に5六歩と突いている。
一時期は先手番で石田流も良く指していたが、もう一年以上指しておらず最近では初手五六歩から、中飛車や向井美Y差を目指すケースが目につくようになっている。
この局面で前例がなくなっている。
代えて先手4五銀が4局(先手2勝、後手2勝)先手1六歩が1局(後手勝ち)が指されていた。
対局35分が経過したところで菅井が席を外した。藤井はセンスをせわしなく開閉させている。菅井は一分ほどで戻って来た。席に着くとすぐに盤面に視線を投げかける。
22.8六歩
2分の考慮で仕掛けた。先手玉が不安定な今がチャンスと見ただろうか。
23.8六同歩
村田顕弘六段「懐かしい仕掛けですね。ゴキゲン中飛車が出たての頃に良く指されていました。以下後手7五歩から同歩、同銀、五四歩、同歩に先手4五銀や先手6五銀と出てどうかですが、当時は振り飛車が指せるという見解だったと思います。でも今は詰みまで研究されているような将棋もありますし、果たしてどうなのですかね」と解説。
24.7五歩
25.7五同歩
26.7五同銀

藤井はこれまで初手合いで負けた相手には、次の対局で必ず勝ってきた。
そもそも、2度負けている相手が大橋貴洸四段のみ(2連勝後、2連敗)という事もあるが。藤井が初手合いで敗れた相手は12人。そのうち3人と2戦目を指しており、本局の菅井戦が4人目となる。果たしてここでもリベンジとなるかどうか。
27.3八銀
菅井は片美濃が濃いに組み上げた。
村田顕弘六段「あ、先手5四歩ではなかったですね。軽くさばいてという時代ではないという事ですか」
対局開始から一時間が経過。藤井が10分程考えている。
村田顕弘六段「ここで後手7六歩にはどういう方針でしょうか。先手6八角か先手5九角ですが、後手8六銀と出ておいて、次に後手7五銀と引く手を見せられて振り飛車が忙しいように思うのですが」
28.7六歩
29分の考慮で角取に歩を打つ。村田顕弘六段の示していた一手だ。
「菅井さんにはきっと何か用意があるはずなんですけど、ちょっと分からないですね」
29.6八角
30.5四歩

「え、後手5四歩って突いたんですか?へー」
村田顕弘六段は意外そうな表情を見せている。
31.7八金
32.5五歩
33.4五銀

この局面で藤井が19分考えて昼食休憩に入った。
ここまでの消費時間は菅井22分・藤井1時間17分
12時40分に対局再開。
ただ藤井は10分経っても考えられている。12時18分ごろに、藤井、菅井の順で対局室に戻ってきており、対局中の様に番を挟んでいた。
34.8八歩
村田顕弘六段「この手で後手5六歩を予想していました。そこで(1)先手4六角は後手6四銀。(2)先手7七歩は後手8六銀、先手4六角、後手8五飛で後手が指せるように思っていました。この後て8八歩はより良さを求めたものなのか、あるいは何か仕方がない順だったのか、分からないです。」

35.8八同金
菅井は1分でこの手を指した。
36.8六銀
藤井は銀のドリブルを選んだ。
37.7四歩
村田顕弘六段「ここで後手7七銀なりは先手同金から同歩成、同桂で対応します」
38.7五銀
39.4六角
40.6四銀

41手から60手まで

41.6六歩
村田顕弘六段「現局面では菅井さんがうまくやったのではないでしょうか。個人的には30手目で後手8六ぎん、34手目で後手5六歩なら後手もまずまずという印象を持っているのですが」
42.5六歩
43.5六同銀
44.6六角
45.8七歩

金取りをガード。
藤井が持ち時間の半分となるに時間を使った。対して菅井はまだ36分しか使っていない。
46.5二飛
47.5五歩
48.5四歩

藤井は5四に歩を合わせる。村田智弘六段は「難しい手ですね。狙いがすぐには分からないです」と話した。
やがて先手5四同歩から同飛、5五歩、4四飛、7九角を示した村田智弘六段は「後手が損をした可能性もあると思います」と言及した。
49.6八飛
50.8四角

村田智弘六段「当たらないですねー」
51.5四歩
52.5四同飛
53.5七歩

ノータイムで指した。
54.3三桂
55.7八金

村田智弘六段「これには後手4四歩の時にどうしますかね。先手3六歩は後手4五歩、先手3七角のときに後手5七角成となれます。ただ今の流れからすると後手5二金右で手を渡しそうな気もしますね」
56.8八歩
57.6五歩
58.5五歩

藤井の残り時間が一時間を切り、残り時間の早見表が記録机の上に出された。
59.6四歩
ノータイムで銀を取る
60.5六歩

61手目から80手目まで

61.5六同歩
手を戻す。後手は5七銀か6四歩か。
村田智弘六段「と金を作られるのは大きいように思いますけどねー」と後手6四歩を予想した。
62.5七銀
63.5七同角

時間を多く残す菅井だが1分で各銀交換に応じた。
64.5七同角成
65.6三歩成
66.8九歩成
67.5三と

菅井の着手が早い
68.6八馬
69.4二と
70.4二同金

藤井も菅井のノータイム指しにこたえるかのように素早く応じた。
★局後の感想
藤井「この辺りはさせているように思いました」
71.6八金
72.7七歩成

歩をなり捨てて金を先手玉から遠ざけに行った。
★局後の感想
藤井「変えて後手7九飛がまさった。ただそれでもまだここは後手ペース」
73.7七同金
74.9九と

香を入手。
感想戦前の主催紙インタビューで藤井はこの9九とを悔やんでいた。
75.6三角
村田智弘六段「勝負手ですね。ただ後手6四飛にはどうするのでしょうか」
16時10分、藤井の消費時間が25分を越えた。残り時間も25分。
76.6四飛
26分の考慮で飛車を寄った。
77.8一角成
78.6九飛成

検討では後手5七桂が示されていたが藤井は竜を作った。
今泉四段「じっと飛車成りですか。これは凄い手ですね。」
「そんなに簡単とは思えないですね。先手5八銀は我慢の死骸のある一手の様に思いますね」
藤井が席を立つ。棋士室に平藤眞吾七段が来訪。
79.5八銀
感想戦
菅井「この銀を打てて、難しくなったように思いました」
80.7九龍
すぐに龍を逃げる。藤井は直ぐに寄せる事は考えていないのかもしれない。

81手から100手まで

81.5四馬
今泉四段「大変な勝負になっているように思います」
局後の感想
藤井「代えて先手4六桂も気にしていました」
82.5一香
局後の感想
代えて後手5七歩から同銀、4五角もあったようだ。
83.7六馬
84.6四桂

平藤七段「藤井さんはちょっと苦しいと見ているのかもしれないですね」
85.6六馬
86.8八角

菅井は座り直し、脇息を引き寄せた。藤井はシャツの袖を肘の辺りまでまくり上げている。
87.6二歩
平藤七段「後手を持って自信がなくなってきました。しょうがないから後手5二金上でしょうか」
残り時間の少ない藤井だが、ここでも時間を使っている。
88.7一金
藤井の残り時間は10分。対して菅井の残り時間は2時間30分。徐々にだが菅井が時間を使い始めている。
89.4六桂
90.7七角成
91.7七同馬
92.7七同龍
93.3四桂
94.3一金
95.7三角

ノータイムで7三角を打った。五て7四竜には先手9一角成のあと、先手3六香が攻防手になる。
村田智弘六段「読みにくい手ですね」
アベマtvでは村田顕弘七段が後手7四竜から9一角成、8二歩、9二馬、7九竜を示している。
96.5六桂
局後の感想
代えて後手7五角が示された。以下先手から8六銀、同竜、同歩、7九飛、3九銀、5六桂が並べると「嫌ですね」と菅井。本譜は桂を跳ねたため、忙しくなった意味があった。
97.5二歩
98.7四龍
100.4二同金

101手から120手目まで

101.4六角成
102.5二香
103.5四歩
104.7三角
105.7三同馬
106.7三同龍

今泉四段「次の一手が注目ですね。5六に桂が残ったのは振り飛車にとって嫌味なところで、僕だと先手5七銀打とかするかもしれないです」
107.3四銀
菅井は攻めの手を選ぶ。
今泉四段「次は先手5一銀が厳しいです。とりあえず後手6二竜でしょうか」
★局後の感想★
藤井「7一金の分、苦しいですね」
菅井「こちらの玉はかなり安全になりましたし、攻めが切れるという事もなさそうなので行けそうかなと」
108.6四角
109.4六角

今泉四段「後手5五歩と我慢するしかないですかね」
110.4六同角
111.4六同歩

107手目から先手4六歩の一手が入った計算で、ここも先手が得をした取引となったようだ。
112.8八角
113.5一角

藤井が一分将棋に入った。
114.7九龍
先手6一歩成から逃げながら攻めに利かせた。ただ先手玉を詰ますためには、持ち駒にあと金銀が加わってどうかというところの様だ。
115.7二歩
★局後の感想★
菅井「ここはどうやるべきか分かりませんでした。最初は先手5三銀などを考えていたのですが、相手に指させて対応した方がいいように思いました」
116.5四香
藤井は金を見捨てて勝負に行った。次に後手4八桂成が狙いだろう。ただ、その手が詰めろになっていない。つまり菅井は駒を渡さずに2手スキが続けば勝ちの局面だ。
117.1八玉
118.4八桂成

★局後の感想★
代えて単に後手4四角成は先手3三銀成、同金に、4二銀で先手よし。
感想戦はこの局面まで。18時55分に終了した。
119.4八同金
120.4四角成

後手3九竜は先手2八金で分かり易く手負けと見たか、藤井は馬を自陣に引き付けて攻めを催促する。
棋士室の脇謙二八段は「藤井さんもなんだかんだでうまく勝負しますね」と感心している。ここで先手が決め切らなければ、後手6二金などが楽しみとなる。

121手から133手投了迄

121.3三銀不成
122.3三同金
123.4五桂
124.4二銀
125.3三桂成

単に金を取った。後手3三同馬に先手4五桂だろう。
126.3三同馬
127.4五桂

菅井は直ぐに桂を打つ
128.5一銀
角を取ったが、先手玉は詰めろになっていない。
129.2一銀
130.2二玉
131.3三桂成
132.3三同玉
133.2二角

この手が決め手の様だ。後手4二ぎょくには3一角成がある。
藤井は大きくため息をつくやがて投了を告げた。後手4二玉、先手3一角成、後手3三玉に先手3五金で後手玉は受けなし。先手玉は詰まない。

投了

133手を見た藤井が投了。
終局時刻は18時13分
消費時間
菅井2時間10分
藤井3時間59分

勝った菅井は次戦で佐藤康光九段と対戦する。

昼食注文メニュー

菅井
『やまがそば』の天おろしそば
藤井
『小雀弥』のぶっかけうどん定食といなり寿司

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